黒い瞳

黒い瞳

「君の瞳を見ていたら、僕はこれが作りたくなったんだよ」

このフレーズを覚えていてくださる方はいるでしょうか。
拙著『北欧の和み―デンマークの扉をあけて』の中、
66頁から4頁にわたって綴った「黒い瞳」というお話です。

そのお話の主人公、ホイスコーレ(学校)の彫金クラスの同級生だった
イタリア人のアンドレア。
そのアンドレアと、13年ぶりにデンマークで再会してきました。

 

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滞在先の友人宅からバスに乗って尋ねた初めての町。
教えてもらった住所を探すと、1番地の表示が迎えてくれました。

アンドレアと再会できたのは、FaceBookのおかげです。
あらためて「友達」となったことをよいことに、訪ねていいかしら?とメッセージを送ったのでした。
(ちょっと、ドキドキしましたよ)

すると、
「もちろん!
その日は夕方から仕事だから、君のためにランチを作って待っているよ」
と、あいかわらずイタリア人男性らしく、甘いメッセージが返ってきました。

 

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小ぎれいな一軒家の中に招き入れられると、ダイニングキッチンに通されました。
動きやすいL型の広やかなキッチンと、窓辺に置かれた小さなテーブル。
向かい合って、白ワインで乾杯です。

 

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お肉が食べられない私のために、タラとエビのソテーを。
繊細に味付けされていて、おいしい!
イタリア式の手作りパンの写真は、うっかり撮り忘れてしまいました・・。
アンドレアはボンホルム島の海辺のイタリアンレストランで働いていて、
この島に家を得て、アルファーという名の猫と暮らしているのでした。

あれ?
アンドレアは、イタリアに帰ったのではなかったの??
記憶のよい読者の方は不思議に思われたかもしれませんね。
「北欧の和み」の中では、そう書いていましたから。

種明かしは興ざめかもしれませんが、、
いくつかのお話は事実をベースにした創作なのです。
アンドレアのお話は、冒頭からスーツケースをかついで、見送ってくれたところまでが本当のお話で、
その先は、私の作った物語。
 

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シェフとして働きながら、彫金も続けていて、玄人はだしの腕前。
時々望まれて仕事としても制作しているのだと言います。
 

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ビールのタブを集めて作ったという暖簾(のれん)も、アンドレアらしい手作り。
 

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デザートはティラミス!
レシピは自分で創作したものだそうで、チョコ色ではないのでした。
ホンマフサイのティラミスとともに、私の中の頂点のティラミスでした。
 

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デザートと一緒に供されたのは、エスプレッソ。
やっぱり、イタリアンなのですね。
 

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二人用のエスプレッソマシーンで淹れてくれましたけれど、
食器棚の中には、一人用、三人用?と、いくつものマシーンが。
ちょっとご自慢なアンドレアでした。
 

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一人暮らしのアンドレアには、実はふたりの男の子がいて、
コペンハーゲンとマルメ(南スウェーデン)に住む彼らは、
時々この家を訪ねてくるそうです。
(黒い瞳の女の子は、、、本の世界の中で生きていますよ・・)

リビングや寝室、洗面所もどうぞ!と見せてくれましたけれど、
どこもこざっぱりと綺麗に整えて暮らしているアンドレア。

おどけて話すひょうきんさに、ふっとさびしそうな間が入ると、
同級生だった頃と変わらないアンドレアと再会した実感がわいてきました。

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アルファーという美しいメス猫を撫でる姿に、
異国に錨を下ろして暮らす人の諦観のようなものを感じたのは、
気のせいでしょうか。

「もうすっかり年をとったよ」
と言いながら、庭にせっせと果樹を植えているアンドレア。
その木がたわわに実を揺らすまで、どんな時間を過ごすのでしょう。
 

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ほんの2時間と少しばかり。
おいしいランチをいただいて、お互い幼子のような英語で話しながらの再会は、
どこか人生の秋色の味わいがありました。

静かな町の春まだ浅い晴れた日の昼下がり。
これから乗る、島から南スウェーデン行きの船の時間が迫りました。
バス停まで送るよ、と一緒に玄関を出ると、
北欧の人々が春を感じるという黄色の花が、
地面にいっぱい咲いているのに心が留まりました。
南欧イタリアを故郷に持つ彼の黒い瞳には、
この花の輝きはどんな風に映るのでしょうか。